トロイゼン碑文。
トロイゼン碑文とは、ペロポネソス半島東端のトロイゼンで知られるようになった石板の碑文。前480年にアテナイを退去し、船に乗って戦うという趣旨の決議が刻まれている。「テミストクレスの決議」とも呼ばれる。
地元の農民が所有していた碑文入りの大理石板が1959年に地元の収集品に加えられ、これを見たペンシルヴェニア大学のM・H・ジェイムソンが翌1960年に内容を公表しました。刻まれた文字そのものは、決議があったとされる時期よりかなり後の様式とされ、後代に彫り直された写しという理解が前提になります。
何が争点か
この碑文が本物の決議を伝えているとすれば、アッティカからの退去は追い詰められた末の処置ではなく、海で決着をつけるためにあらかじめ組まれた段取りだったことになります。ヘロドトスの叙述から一般に読み取られてきた緊急避難という像とは、印象がかなり違います。
疑いの側の論拠
一方で、前347年に弁論家アイスキネスがこの種の決議を読み上げたとデモステネスが述べていることから、マケドニアの圧力を前にした時期に、アテナイの犠牲を強調するために作られた文面ではないかという説も出されました。公表から現在まで議論は続いており、決着していません。
補足:碑文の年代・文言の復元・真贋の評価は研究者によって異なる。参照するときは、公表された報告と最新の研究の双方での確認を推奨する。