悉皆調査(しっかいちょうさ)。
悉皆調査(しっかいちょうさ)とは、対象となる集団の一部を抜き出すのではなく、全員を調べる調査方式。標本調査(サンプリング)の対になる考え方。「悉皆」は「ことごとく、すべて」という意味の言葉。
調査には大きく二つのやり方があります。一つは、対象の中から一部を選んで調べ、そこから全体の姿を推し量る標本調査。もう一つが、対象の全員を調べる悉皆調査です。国勢調査のように「全数調査」と呼ばれることもあります。文部科学省の全国学力・学習状況調査は、令和8年度の場合、小学校第6学年および中学校第3学年の全児童生徒を対象とした悉皆方式で実施されました。
全員を調べると、何ができるのか
標本調査は少ない負担で全体の傾向をつかむのに向いていますが、抜き出した集団の中には十分な人数が入らない単位(たとえば個々の学校や学級)については、意味のある数字が出せません。悉皆であれば、全体の傾向を見ることに加えて、一つひとつの学校や自治体が「自分たちの結果」を受け取り、指導の改善に使うことができます。全国学力・学習状況調査で、学校ごとの結果が返され、教育委員会向けにデータの見方や集計用のレイアウトが提供されているのは、この性質があるためです。
負担と、副作用
一方で、全員を対象にするため実施の負担は大きくなります。会場・端末・日程の確保、採点や集計の量は標本調査と比べものになりません。もう一つ、しばしば指摘されるのが「順位づけへの傾き」です。全員のデータがそろうと平均値の比較がしやすくなり、本来の目的である指導改善よりも自治体間の順位に関心が集まりやすい、という論点があります。数字を受け取る側が、平均の高低ではなく分布や設問ごとの内容を見る姿勢を持てるかどうかが問われる方式だと言えます。
なお、全国的な学力調査には悉皆調査とは別に、抽出した集団を対象として学力の経年変化を追う「経年変化分析調査」も置かれており、令和9年度以降の実施方法の方向性については令和8年6月改定の資料に整理されています。同じ「全国学力調査」という言葉の中に、目的の違う複数の調査が含まれている点は押さえておきたいところです。
補足:実施方式(悉皆/抽出)や対象教科は年度によって変更されてきた経緯がある。各年度の実施要領・公表資料での確認を推奨。