人虎伝。
人虎伝とは、唐代の伝奇小説。詩人を志した李徴という男が、発狂の末に虎へ姿を変える顛末を描く。
「伝奇」は、不思議な出来事を語る唐代の物語形式を指す言葉です。人が獣に変わる話は、この時代の伝奇に珍しくありません。
誰が書いたか
清の陳世熙が編んだ説話集『唐人説薈』に、李景亮の作として収められています。作者の経歴を伝える記録はほとんど残っていません。
物語の中で、虎になった李徴が即興で詠む七言律詩は、より古い版(『太平広記』所収本)には無く、後から加えられたものとされています。
山月記との関係
中島敦の短編『山月記』(1942年、雑誌『文學界』二月号発表)は、この物語の骨格をそのまま素材にして書かれました。旧友との再会、身を隠したままの対話、即興の詩など、主な筋立ては人虎伝に由来します。
補足:中島敦が書き加えたのは、李徴が自分自身の性格を「臆病な自尊心と尊大な羞恥心」と分析する場面など、心理の掘り下げにあたる部分です。関連:隠れていた李徴が、たった一度だけ、姿を見せた。