講師をしながら採用を待つ。
先生になるこの入り口が、九年で細りました。
要点:文部科学省は2026年7月22日、学校教員統計調査の令和7年度中間報告を公表しました。公立小学校で新しく教員になった人のうち、大学などを出たばかりの新卒が64.4%を占めています。平成27年度間の45.1%から19.3ポイント上がりました。逆に減ったのが非常勤講師等からの採用で、6,335人から3,534人へ。九年で4割超少なくなっています。中学校・高校でも向きは同じです。ただし採用者の総数はほとんど動いていません(公立小学校で18,231人→18,590人)。増減ではなく、入り口の内訳が入れ替わりました。そして統計そのものは、なぜそうなったかを書いていません。
教員になる道筋の説明として、長く語られてきた型があります。まず講師として学校で働き、経験を積みながら採用選考を受け直す、というものです。この型は、いまも成り立つのでしょうか。三年に一度の調査に、その手がかりが載りました。
学校教員統計調査は、教員の年齢・学歴・給料月額といった属性と、採用・転入・離職の異動状況を調べる基幹統計です。今回の中間報告では、属性は令和7年10月1日現在、異動状況は令和6年度間(2024年度)の数字がまとまりました。確定値の公表は令和9年3月の予定です。
入れ替わったのは、内訳のほうでした
公立小学校の「採用前の状況別 採用教員数」を、九年前と並べます。
| 採用前の状況 | 平成27年度間 | 令和6年度間 |
|---|---|---|
| 新卒(学部・大学院の新規卒業修了) | 8,231人(45.1%) | 11,969人(64.4%) |
| 非常勤講師等 | 6,335人(34.7%) | 3,534人(19.0%) |
| 官公庁(主に教育委員会の人事異動) | 2,021人(11.1%) | 1,638人(8.8%) |
| 左記以外(民間企業・自営業ほか) | 1,644人(9.0%) | 1,449人(7.8%) |
| 計 | 18,231人 | 18,590人 |
総数の差は359人です。九年でこの程度しか動いていない一方、新卒は3,738人増え、非常勤講師等は2,801人減りました。同じ器のなかで、中身が入れ替わっています。
公立中学校も同じ向きです。新卒が3,841人(36.4%)から6,150人(56.8%)へ、非常勤講師等が4,404人(41.8%)から2,678人(24.7%)へ。総数は10,544人から10,821人で、こちらもほぼ横ばいでした。公立高等学校は新卒が2,000人(33.5%)から2,460人(45.3%)、非常勤講師等が2,565人(43.0%)から1,844人(34.0%)で、動きは小学校ほど急ではありません。
三つの学校種に共通しているのは、九年前には「非常勤講師等」が新卒と拮抗する、あるいは上回る入り口だったという事実です。中学校では最大の入り口でした。それがいまは、どの学校種でも新卒の半分以下になっています。
この統計は、理由を書いていません
ここから先は慎重に進めます。学校教員統計調査は人数を数える調査であって、なぜそうなったかを説明する調査ではありません。同じ数字から、少なくとも二つの読み方ができます。
一つは、講師として学校にいる人そのものが減った、という読み方です。採用の母集団が薄くなれば、そこから採る人数も減ります。この読み方が正しければ、講師経験者が選考で不利になったわけではなく、単に人がいないということになります。
もう一つは、自治体が新卒を早く確保する方向へ動いた、という読み方です。大学3年生を対象にした前倒し選考や、教職課程の学生を早期に囲い込む取り組みは、近年いくつもの教育委員会が導入しています。本紙も先週、秋に追加で行われる採用選考を並べたばかりです。年内に決まる仕組みが増えれば、新卒の比率は自然に上がります。
どちらが主な要因なのかは、この中間報告だけでは決められません。両方が同時に起きている可能性もあります。特別選考の枠組みや講師登録者数の推移といった別の資料を突き合わせないと、裁定はできないところです。分からないことは分からないまま置いておきます。
採用の総数が動かず、内訳だけが入れ替わったとき、増えた側の理由と減った側の理由は、必ずしも同じではありません。
出ていく側も、同じ年に形が変わっています
入り口だけを見ていると片手落ちになるので、離職の側も見ておきます。公立小学校の離職者は13,840人で、前回調査時より1,190人減りました。減ったのは良い知らせに見えますが、内訳が変わっています。
定年(勧奨を含む)による離職は5,506人で、全体の39.8%。平成27年度間は11,642人・66.0%でした。定年以外が8,334人・60.2%を占め、多数派が入れ替わっています。定年以外の内訳では、転職2,552人、家庭の事情2,269人、病気1,040人の順です。
病気のなかの精神疾患は801人でした。平成27年度間は331人です。九年で2.4倍になっています。同じ欄を中学校で見ると213人から365人、高等学校で75人から153人でした。数としては全離職者のなかで大きくはありませんが、増え方の角度は他の理由と違います。
なお、定年退職者の減少そのものは、年齢構成の変化を反映しているとも読めます。公立小学校で50歳以上が占める比率は29.4%で、前回より1.9ポイント下がりました。中学校は31.6%(2.3ポイント低下)、高等学校は43.0%(0.9ポイント低下)です。定年を迎える層が薄くなれば、定年退職者は減ります。
数字の使いどころを、一つだけ
この中間報告には、ほかにも読みどころがあります。公立小学校の平均週教科等担任授業時数は17.7単位時間で、前回より0.5低下し過去最小になりました。大学院修了者の占める割合は小学校5.4%・中学校9.4%・高等学校17.5%で、すべて過去最多です。どれも、教員という仕事の輪郭が少しずつ変わっていることを示しています。
そのうえで、いま手を動かせることを一つに絞ります。社会人から教員をめざしていて、「まず講師として入る」という計画を立てている方は、志望する自治体の講師登録の案内を開く前に、同じ自治体の採用選考要項の特別選考の欄を先に読んでみてください。社会人経験者を対象にした区分、教科や校種を限った区分、前年度の選考結果を引き継げる区分などが、自治体ごとにかなり違う形で置かれています。
順序を逆にする理由は単純です。講師登録は年度の途中でも受け付けている自治体が多い一方、採用選考の出願期間は年に一度か二度しかありません。締切のあるほうを先に見る、というだけの話です。
付け加えれば、この統計は「講師を経ての採用が不利になった」とは言っていません。言えるのは、その入り口を通る人の数が減った、ということだけです。九年前の地図をそのまま使わない、という程度に受け取っておくのが、いまのところ妥当だと考えます。
編集責任者:Tatsuki Morohashi(発行人・運営者情報) / 最終更新:2026.08.21
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