秋の教員採用を5件並べました。「もう一度受けられる」とは限りません。
要点:2026年7月から8月にかけて、5つの自治体が2027年度採用の「秋選考」「特別選考」の要項を公表しました。名前はよく似ています。けれど対象者の欄を読み比べると、島根県は県外の正規現職教員と経験者だけ、神戸市は離職の理由ごとに7つの区分、佐賀県は一般選考も置く、神奈川県は募集する校種そのものを入れ替えた、という具合に、受けられる人の重なりはほとんどありません。「秋にもう一度」という一語でまとめると、出願できない窓に向かって準備してしまいます。
8月は、夏の教員採用選考の結果が出そろう月です。山口県教育委員会は8月12日に第2次試験の結果を公表し、名簿登載予定者は381人、最終倍率は2.4倍でした。島根県教育委員会は8月5日に一般選考の2次結果を公表し、713人の受験者から405人が合格しています。茨城県、岡山県、岩手県も、この2週間のうちに合格者を発表しました。
同じ2週間に、まったく別の募集が並んで出ています。8月10日には島根県が「特別選考試験(第2回)」の案内を掲載し、同じ日に神戸市が特別選考の受験案内を公表しました。その少し前、8月7日には佐賀県が「秋選考」の実施要項を出しています。夏の結果を受け取ったばかりの人にとって、これは目に入りやすい見出しです。
ただ、5件を横に並べて対象者の欄だけを読むと、様子がかなり違いました。
同じ「秋」でも、入口が別々です
公表されている範囲で、対象・締切・試験日を並べます。いずれも2027年度(令和9年度)採用に向けたものです。
| 自治体 | おもな対象 | 出願の締切 | 試験日 |
|---|---|---|---|
| 滋賀県 「秋選考」 | 県外自治体の現職教員 | 8月28日 17時 | 要項による |
| 島根県 特別選考試験(第2回) | 県外の正規現職教員、または過去10年以内に通算3年以上の正規教員経験者 | 9月16日 17時 | 10月4日 |
| 神奈川県 秋期試験 | 特別支援学校。小・中・高・特支いずれかの普通免許状の所有者または2027年3月31日までの取得見込み者 | 9月30日 | 1次 10月17日 2次 11月14日 |
| 神戸市 特別選考 | 他自治体の現職教員、離職者(一般/子の養育/介護)、夏の選考の不合格者・辞退者など7区分 | 10月13日 | 面接等 11月16日〜21日 |
| 佐賀県 「秋選考」 | 一般選考のほか、UJIターン・社会人・英語スペシャリストの3つの特別選考 | 10月19日 | 11月14日・15日 |
締切がいちばん早いのは滋賀県で、この記事の公開時点で残り12日です。いちばん遅い佐賀県とは、7週間以上の開きがあります。「秋だから9月か10月に動けばよい」という見当は、少なくともこの5件では通りません。
いちばん狭いのは、島根県の第2回でした
島根県の特別選考試験(第2回)は、8月10日午前9時に出願受付が始まりました。対象は県外の正規現職教員か、正規教員の経験者です。現職の場合は2027年3月31日時点で通算3年以上の勤務経験、経験者の場合は過去10年以内に通算3年以上という要件が置かれています。県は「これまでの正規教員としての豊富な経験により採用後に即戦力として活躍できる人」を求めていると説明しています。
つまりこれは、教員免許を持っているだけでは受けられない選考です。夏の一般選考に届かなかった人が、そのまま秋に挑み直せる枠ではありません。試験の中身も、筆記ではなく40分程度の個人面接を2回と場面指導で、経験のある人を前提にした設計になっています。
募集区分は小学校教諭30名程度、中学校教諭は数学・理科が各10名程度など、決して小さくありません。合格者は名簿に登載されたうえで、本人の希望と欠員の状況によっては2026年度の途中から採用される場合もあると案内されています。年度の途中に人が足りなくなる、という現実がそのまま制度の形になっています。
神戸市は、離職の理由まで区分にしています
神戸市が8月10日に公表した特別選考は、7つの区分に分かれています。他自治体の現職教員、他自治体で正規教員を経験した離職者、神戸市で正規教員を経験した「一般離職者」、そして「子の養育を目的とした離職者」「介護を目的とした離職者」。さらに、今年度の夏の選考で不合格になった人や辞退した人を対象とする区分が2つあります。
離職の理由で区分を分けるのは、少し珍しい書き方です。一括りに「離職者」とせず、子の養育と介護をそれぞれ独立した区分として立てているところに、いったん現場を離れた人をどう呼び戻すかという問題意識が見えます。もっとも、区分ごとの要件の違いまでは受験案内の段階では読み取れません。実施要項は8月25日に神戸市教育委員会のサイトに掲載される予定とされており、出願期間の初日と同じ日です。
採用予定人数は、7区分いずれも「若干名」。窓が増えたことと、席が増えたことは、同じではありません。
佐賀県だけ、秋にも一般選考があります
佐賀県の「秋選考」は、この5件のなかで唯一、一般選考を含んでいます。採用予定者数も具体的で、小学校が25人程度、中学校は国語5人程度・理科4人程度・英語5人程度、高等学校は工業の機械と電気が各2人程度といった内訳が示されています。特別選考のほうは、他都道府県・政令市の現職教員や民間企業等での勤務経験者を対象とする「さがUJIターン特別選考」、民間企業等での実務経験を評価する「社会人特別選考」、そして「英語スペシャリスト特別選考」の3つで、いずれも若干名です。
あわせて、2028年度採用に向けた「チャレンジ受験」も実施されます。受付は9月28日から10月19日、試験は11月14日・15日に佐賀県立佐賀工業高等学校で行われ、合格発表は12月4日。9月18日午後6時からオンライン説明会も開かれます。受験資格や免除・加点の制度は選考ごとに異なるため、実施要項で確認するよう案内されています。
神奈川県は、募集する校種を入れ替えました
神奈川県の場合、変わったのは日程ではなく中身です。県が2026年2月10日に発表した資料によると、令和8年度実施の選考では秋期試験の校種を小学校から特別支援学校に変更し、あわせて全国の国公立学校の正規教員を対象とする特別選考「国公立学校正規教員」を新設しました。
秋期試験の受験資格は、小学校・中学校・高等学校・特別支援学校いずれかの教員普通免許状を持っているか、2027年3月31日までに取得見込みであること。特別支援学校の免許を採用時に持っていない場合は、採用後3年以内に取得するよう努めることとされています。ここは5件のなかでいちばん間口が広く、免許の取得見込みの段階でも出願できます。ただし対象は特別支援学校だけで、去年まで秋に受けられた小学校は、この年はもうありません。
「秋選考が続いている」と聞いたときに、去年と同じ条件が続いていると考えるのは早いということです。
この動き自体は、4年前の答申に書かれています
なぜ今なのか、という問いには、一つはっきりした出どころがあります。中央教育審議会が令和4年12月19日にまとめた答申「『令和の日本型学校教育』を担う教師の養成・採用・研修等の在り方について」に、次の一節があります。
現在も多くの自治体が実施している民間企業等の勤務経験者に対する面接を中心とした特別な選考の拡充を行うことや、そのような選考を夏季のみならず、秋季~冬季にかけて実施すること、期間を区切った入職を希望する者に対し、任期付任用職員として教職に就くことを前提とした選考を実施するなど、すでに一部の自治体で行われている取組みを推進していく(中央教育審議会答申、令和4年12月19日)
同じ答申は、教員採用選考試験の実施時期が「4~5月に出願、7月に1次試験、8月に2次試験」という形で少なくとも20年以上大きく変わっていないことも指摘しています。秋の選考は、その固まった一本の流れを複数にする試みとして書かれたものです。
ここで注意したいのは、答申が想定していたのが主として「民間企業等の勤務経験者」や、免許を持ちながら教職に就いていない人だった、という点です。夏に落ちた人の敗者復活という設計思想では、もともとありません。今回並べた5件のうち、島根県と滋賀県が現職・経験者に限っているのは、この線に沿った形と読めます。神戸市が夏の不合格者・辞退者の区分を置いているのは、むしろ後から足された用途に見えます。
確かめていないこと
ここで扱ったのは5件だけです。全国でいくつの自治体が秋の選考を実施しているかは数えていませんし、実施数が去年より増えたのかどうかも確かめていません。報道では北九州市や茨城県の秋の選考も伝えられていますが、要項の中身までは今回は読めませんでした。したがって「秋選考が全国的に拡大している」と言い切ることはできません。言えるのは、7月下旬から8月中旬という短い期間に、条件のまったく違う募集が並んで出た、ということです。
もう一つ、それぞれの選考の倍率や、実際に何人が採用されたかも公表資料からは追えていません。「若干名」という表記の実際の幅も分かりません。
いま確かめられること
読んで手が動く範囲に絞ると、順番はこうなります。
第一に、自分が受けたい自治体の教育委員会のサイトで、「特別選考」「秋選考」「秋期試験」のどの語で掲載されているかを探すこと。呼び方が統一されていないので、一つの語で検索すると見落とします。神奈川県のように県の記者発表資料に出る場合もあれば、島根県のように採用専用サイト(しまねの先生ナビ)に載る場合もあります。
次に、対象者の欄を最初に読むこと。日程や試験内容より先です。今回の5件では、勤務経験の年数(島根県の通算3年以上)、離職の理由(神戸市)、免許の校種(神奈川県)のどれかで、対象が絞られていました。ここで外れていれば、あとの情報を読む必要はありません。
そして、締切から逆算すること。島根県は出願とは別に、受験者調査票の入力期限(9月23日)と提出書類の郵送期限(9月18日必着)が設定されています。免許状の証明書や在職申告書といった書類は、当日には用意できません。締切の日付を一つ覚えるのではなく、期限が何本あるかを先に数えておくほうが安全です。
最後に、要項がまだ出ていない場合は、公開予定日を控えておくこと。神戸市の実施要項は8月25日の掲載予定で、これは出願期間の初日と重なります。要項を読んでから準備を始めると、締切までの時間は案内に書かれた期間より短くなります。
編集責任者:Tatsuki Morohashi(発行人・運営者情報) / 最終更新:2026.08.16
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