同じ名前の試験が、来年度から分かれます。
専門知識で重なっていたのは「経営戦略・デジタル戦略」だけでした。
要点:情報処理技術者試験は2027年度から新しい制度に移ります。応用情報技術者試験と高度試験は「プロフェッショナルデジタルスキル試験(仮称)」として大括りにされ、マネジメント・データ / AI・システムの三つの区分に分かれます。IPAはこのうち二つのシラバス案を公開しています。私はその二本を全文で突き合わせました。専門知識(科目A-2)で重なった中分類は「経営戦略・デジタル戦略」の一つだけ、技能(科目B)は小項目15個ずつで名称の重複はゼロでした。ここまでを見れば、別々の試験だと言えます。ところが問題数を数えると、絵が変わります。
2027年度から、情報処理技術者試験の区分がつくり変わります。IPAと経済産業省が2026年3月31日に検討状況を公表し、現行制度は2026年度の試験実施をもって終了する予定とされました。新しい制度では8試験区分となり、応用情報技術者試験と高度試験は大括り化されてプロフェッショナルデジタルスキル試験(仮称)に再編され、マネジメント領域・データ / AI領域・システム領域の三つの区分が置かれます。
三つに分かれると聞いたとき、まず知りたくなるのは「どれを受けるのか」でしょう。私も同じことを考えました。ただ、いま公開されているのは確定した出題範囲ではなく、シラバス「案」です。それでも案には案の読み方があります。
IPAは2026年6月30日にシラバス案の掲載を始め、7月31日に更新しました。この時点で本文が出ているのはマネジメントとシステムの二本で、データ / AIとITパスポート試験、基本情報技術者試験などは「準備中」です。更新の注記には、Ver.0.2で【目標とする知識(専門知識)】を追加した、とあります。つまり専門知識の細目が読めるようになったのは、7月31日からということになります。
並べてみます
同じことをやり直せるように、手順を書いておきます。実施日は2026年8月19日です。
対象は、IPAの「新試験制度のシラバス案について」に掲載されている二つのPDF、「プロフェッショナルデジタルスキル(マネジメント)試験(仮称) シラバス案 Ver.0.2」と「プロフェッショナルデジタルスキル(システム)試験(仮称) シラバス案 Ver.0.2」です。掲載ページの表記では、どちらも488 KBと同じサイズで並んでいます。
やったことは三つです。第一に、【目標とする知識(専門知識)】に出てくる「大分類◯:… 中分類◯:…」の行をすべて書き出しました。第二に、【目標とする技能】の大項目と小項目を書き出しました。第三に、両方に現れた中分類については、その中の小分類・項目・用語例を一語ずつ照らし合わせました。数はすべて私が読んで数えたもので、IPAが公表している集計ではありません。
重なったのは、一本だけでした
専門知識の中分類は、マネジメントが8本、システムが9本ありました。並べます。
| マネジメント(8本) | システム(9本) |
|---|---|
| 1-1 ビジネス変革の方法論 | — |
| 1-2 経営戦略・デジタル戦略 | 1-2 経営戦略・デジタル戦略 |
| 1-3 ビジネスモデル・ビジネスプロセス | — |
| 1-4 サービスマネジメント | — |
| 1-5 プロジェクトマネジメント | — |
| 3-12 ガバナンス・監査 | — |
| 6-24 情報セキュリティマネジメント | 6-26 セキュリティ実装技術・評価 |
| 7-28 ビジネス関連法規 | — |
| — | 4-13 デジタルサービス・デジタルツール |
| — | 4-14 システムの種類・構成 |
| — | 4-15 クラウド |
| — | 4-16 ネットワーク |
| — | 4-17 データベース |
| — | 5-20 システムライフサイクルプロセス |
| — | 5-21 開発・運用の方法論 |
表側の数字は、シラバス案に書かれている「大分類◯」と「中分類◯」をそのまま並べたものです。重なったのは1-2「経営戦略・デジタル戦略」の一本だけでした。大分類6のセキュリティは両方に出てきますが、中に入っている中分類は24と26で別物です。片方はマネジメントの規程やISMS、もう片方はTLSやSQLインジェクション対策の話をしています。
技能(科目B)のほうは、もっときれいに分かれていました。大項目はどちらも4つ、小項目はどちらも15個で、数がぴたりと一致します。そして名称の重複は一つもありません。マネジメントは「組織及びビジネスの変革・デジタル戦略」「サービスマネジメント」「プロジェクトマネジメント」「組織のガバナンス・監査」、システムは「システムアーキテクチャ」「ネットワーク」「フィジカルコンピューティング」「システムの開発・運用」です。
同じ枚数の器に、まったく違うものが入っている。二本を並べたときの手ざわりは、これに近いものでした。
もう一つ気づいたことがあります。中分類の番号が飛んでいるのです。マネジメントは1・2・3・4・5のあと12へ跳び、24、28で終わります。システムは2から13へ跳びます。小分類の番号も、システム側は「1 経営戦略」を持たないまま「2 デジタル戦略」から始まっていました。番号が保たれたまま抜けているということは、この二本は区分ごとに書き下ろされたのではなく、一本の共通の体系から必要なところを抜き出してつくられている、と読めます。
同じ項目名でも、中身はずれていました
では、唯一重なった1-2「経営戦略・デジタル戦略」の中はどうなっているのか。ここが今回いちばん面白いところでした。
項目の名前だけを見ると、システム側の6項目はすべてマネジメント側にもあります。包含関係です。マネジメント側にはさらに4項目(経営戦略の策定、全体戦略の策定、ビジネス戦略の策定、デジタル活用促進)があり、合計10項目でした。
ところが用語例を開くと、同じだったのは2項目だけでした。
| 項目 | 差 |
|---|---|
| デジタル戦略の策定 | マネジメントだけに「組織文化の変革」「DX推進指標」「DX認定制度」。システムだけに「データの有効活用」「最新技術の活用(生成AI など)」 |
| 情報システム戦略の策定 | マネジメントだけに「経営資源配分」「スケーラビリティ」と〔情報システム投資計画〕の一区画。システムだけに「コンプライアンス」「リスクマネジメント」「情報セキュリティ」 |
| システム化計画 | 一字一句同じ |
| 要件定義 | システム側に「性能要件」が1語だけ多い。ほかは同じ |
| 調達計画・実施 | マネジメントだけに「知的財産権利用許諾契約」と契約類型の内訳(完全定額契約、コストプラスインセンティブフィー契約 など)。システムは契約名だけ |
| エンタープライズアーキテクチャの理論 | 一字一句同じ(8語) |
非対称なのが分かります。契約については、マネジメント側だけが内訳まで開いています。逆にシステム側は、要件定義に「性能要件」を1語足しています。1語しか違わないのですが、その1語がどちらの試験なのかを示している、という書き方になっています。
「生成AI」という語も同じでした。この語が現れたのは、システム側の「最新技術の活用(生成AI など)」の一か所だけです。マネジメント側にAIが出てこないわけではありません。AIトランスフォーメーション(AX)、AIガバナンス、AI基本法、EU AI Act、そして技能側の「新技術(AIほか)の利活用などに関する監査」といった形で出てきます。ただ、いずれもガバナンス・法規・監査の側からの登場でした。システム側にはこれに加えて、AI駆動開発、バイブコーディング、エージェンティックコーディング、仕様駆動開発(SDD)、LLMOps、AIBOM、プロンプトインジェクション対策、フィジカルAIといった語が並びます。
作る側から入るのか、統べる側から入るのか。同じAIという語の扱いが、二本で分かれていました。
ところが、問題数で見ると絵が変わります
ここまでの数字は、ほとんど重ならない二つの試験を指しています。けれども、これは公開されている二本だけを見たものでした。
IPAが2026年3月31日に公表した新試験制度の概要には、プロフェッショナルデジタルスキル試験の出題数が書かれています。科目A-1が60問、科目A-2が23問、科目Bが12問。合計95問です。
そして今回私が突き合わせたのは、科目A-2と科目Bのシラバス案です。二本のPDFの冒頭にはこう書かれています。科目A-1の用語例は「プロフェッショナルデジタルスキル試験(仮称)及び情報処理安全確保支援士試験 共通知識 シラバス(案)」で示す、と。つまり科目A-1は、区分をまたいで共通なのです。
| 科目 | 出題数 | 区分ごとに違うか | シラバス案 |
|---|---|---|---|
| A-1(共通知識) | 60問 | 共通 | 準備中 |
| A-2(専門知識) | 23問 | 違う | 公開済み(今回突き合わせた) |
| B(技能) | 12問 | 違う | 公開済み(今回突き合わせた) |
| 合計 | 95問 |
95問のうち60問、割合にして約63%が共通知識です。私が「ほとんど重ならない」と言っていたのは、残る35問についてです。試験時間で見ると比率は変わります。科目A-1が90分、科目A-2と科目Bを合わせて120分で、合計210分。共通部分は時間では約43%です。問題数の63%と時間の43%が食い違うのは、科目Bが記述や事例を扱う設計だからだと思われますが、そこはまだ形式が公表されていないので推測にとどめます。
加えて、IPAは免除制度を検討していると書いています。現行の高度試験と同等の免除制度を設けることを検討中で、経過措置として、現行の高度試験や情報処理安全確保支援士試験で一部科目の免除要件を満たした場合には、一定期間、新しい試験でも一部科目を免除することを検討しているとされています。まだ「検討」の段階です。ただ、もし科目A-1が免除される道があるのなら、実質の勝負は35問側、つまりほとんど重ならない部分に寄っていくことになります。
ここからは言えないこと
測ったのはPDF2本だけです。言えないことを、はっきり書いておきます。
まず、これは案です。二本のPDFの表紙には「本資料の内容は公表時点の検討状況に基づくものであり,変更する可能性があります」と明記されています。私が数えた8本と9本は、確定した出題範囲の本数ではありません。
次に、共通部分の中身は測れていません。いちばん問題数の多い科目A-1のシラバス案が準備中だからです。今回の突き合わせは、95問のうち35問ぶんについてのものです。ここを「試験全体の比較」と読まれると、外します。
三つめに、Ver.0.1との差分は自分では測れませんでした。掲載ページからVer.0.1のリンクが外れており、いま置かれているのは0.2だけです。何が変わったのかはIPAの注記(専門知識を追加した)に頼るしかなく、注記の外側で細かい修正があったかどうかは分かりません。
四つめに、ファイルサイズが同じことに意味はありませんでした。掲載ページはどちらも488 KBと表記していますが、本文の分量は違いました。ページ番号を見ると、マネジメントは20ページ、システムは22ページです。サイズ表記が並んでいるのは丸めの結果で、中身が同じ量だという証拠にはなりません。最初に「同じサイズだ」と思ったところから調べ始めたので、これは私の見込み違いです。
五つめに、データ / AI区分が抜けています。三つに分かれるのに、比べられたのは二つだけです。三本目が出れば、この記事の数字はすべて数え直しになります。
いま決められること、一つ
受ける区分を決めるのに、共通知識のシラバス案を待つ必要はありません。そこは区分によらず同じだからです。決め手になるのは、公開済みの科目A-2と科目Bです。
やることを一つだけ挙げるなら、二本の【目標とする技能】を読み比べてみることをおすすめします。専門知識の用語例は数が多くて目が滑りますが、技能の側は小項目15個ずつで、それぞれ「〜するスキル」という形で書かれています。自分がふだんやっている仕事の言葉が、どちらのページに多く並んでいるか。それを見るだけで、かなり早く見当がつくと思います。リスキリングの計画を立てるときも、範囲の広さより先に、いま立っている場所を確かめたほうが道筋は引きやすいはずです。
なお2026年度の試験は、現行制度のまま実施されます。IPAは、2026年度に実施する現行試験や過去の合格情報も新しい情報基盤に登録して活用できるようにする、と書いています。新制度を待って手を止める理由は、少なくとも制度の側からは示されていません。
編集責任者:Tatsuki Morohashi(発行人・運営者情報) / 最終更新:2026.08.19
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