リスキリング — 2026.08.13 NO.053 / TSUGINOTE LEARN

新規指定は138講座。
では、検索システムに並ぶ3,485は、いつまでの数字なのか

ノートパソコンと資格の証書、職務経歴をまとめた書類が机に並び、社会人がキャリアの記録を整えているイラスト

要点:厚生労働省が令和8年8月6日、教育訓練給付金の対象となる「専門実践教育訓練」の令和8年10月1日付け指定講座を公表しました。新規指定は138講座、10月1日時点の給付対象は3,485講座です。ただしこの発表には数字が三つあり、見出しになっていない三つめに、指定の有効期間という期限が書き込まれています。

この種の発表は、たいてい「増えた数」が見出しになります。今回も「新規指定講座は138講座」が副題に置かれました。増えた数は分かりやすく、報じやすく、そして受け取る側にとってはあまり使いどころのない数字です。自分が受けたい講座が138のなかに入っているかは、138という数を知っても分かりません。

それでは、学ぶ側にとって効く数字はどれでしょうか。私はこの発表を、数字を三つに分けて読み直しました。分けてみると、いちばん地味な三つめが、いちばん日付に近いところにありました。


発表に出てくる数字は、三つあります

ひとつめは新規指定の138講座。ふたつめは、10月1日時点で専門実践教育訓練として給付の対象となる講座の総数3,485講座。そして三つめが、括弧のなかに小さく置かれた再指定483講座です。

138講座の中身を類型別に見ると、いちばん多いのは介護福祉士・看護師・美容師・社会福祉士・保育士・歯科衛生士などの資格取得を目標とする養成課程で63講座。次に多いのが第四次産業革命スキル習得講座等の50講座です。専門学校の職業実践専門課程およびキャリア形成促進プログラムが14講座、大学等の職業実践力育成プログラムが8講座、専門職大学等の課程が2講座、専門職大学院や外国の大学院の学位取得のための課程が1講座と続きます。

類型新規指定10月1日時点の対象
業務独占資格・名称独占資格の養成課程63講座1,953講座
第四次産業革命スキル習得講座等50講座441講座
専門学校の職業実践専門課程等14講座697講座
大学等の職業実践力育成プログラム8講座242講座
専門職大学等の課程2講座4講座
専門職大学院・外国の大学院の課程1講座148講座

左の列と右の列で、順番が入れ替わっています。この入れ替わりが何を意味するのかは、後で戻ってきます。先に、三つめの数字のほうを見ておきたいのです。

三つめの数字に、期限が書き込まれています

再指定483講座には、発表のなかで注が付いています。「令和8年9月末で3年間の指定有効期間を満了する講座のうち、再指定を受けた講座の数」。つまり、この制度の指定は永続ではありません。3年で有効期間が切れ、そこで更新されるものと、されないものに分かれます。

増える側の数は見出しに載り、切れる側の数は載らない。指定講座の一覧は、増減の差ではなく、更新の結果として毎年二度書き換えられています。

ここで正直に書いておきます。9月末で有効期間を満了した講座が全部で何講座あったのかは、この発表には書かれていません。書かれているのは、そのうち再指定を受けた483という数だけです。ですから再指定されなかった講座が何講座あるのかを、私はこの資料から出すことができません。差を勝手に計算して「これだけ減った」と書くのは、根拠のない数を作ることになります。

それでも、学ぶ側が受け取れることは残ります。いま講座検索システムに並んでいる講座のうち、9月末に有効期間の区切りを迎えるものがあるという事実です。今日見えている一覧が、10月1日の一覧と同じとは限りません。受講の申し込みと受講開始が9月と10月にまたがる場合、その講座が受講開始の時点でも指定を受けているかどうかは、講座の説明ページを見ただけでは確かめきれません。給付の可否は講座側ではなく、雇用保険の受給要件と指定の状況の両方で決まります。厚生労働省の案内も、支給申請と受給要件の確認先を管轄のハローワークとしています。

新規の顔ぶれと、全体の顔ぶれは違います

先ほどの表に戻ります。新規138講座のなかで第四次産業革命スキル習得講座等は50講座、およそ36%を占めます。ところが10月1日時点の全体では441講座で、3,485講座に対して約13%です。逆に養成課程は、新規では63講座なのに、全体では1,953講座と半分を超えます。

この差を「デジタル系の講座は少ない」と読むのは、たぶん急ぎすぎです。母数の大きい養成課程は、看護師や介護福祉士のように何年も前から続く課程が積み上がったストックです。一方で新しく入ってくるものの重心は、別のところに寄っている。同じ一覧を、積み上がった結果として見るか、いま増えている方向として見るかで、見える形が変わります。

「リスキリング」という言葉を検索したときに出てくる講座の印象と、給付の対象として実際に並んでいる講座の重心がずれるのは、この二つを混ぜて見ているからかもしれません。リスキリングという語そのものの定義の揺れについては、以前に別の記事で扱いました。

いちばん速く動いているのは、学び方の内訳です

実施方法別の内訳を見ると、新規138講座のうち通学制が77講座、通信制が61講座。そして通信制61講座の内訳は、郵送による通信教育が3講座、一部e-ラーニングが9講座、e-ラーニングのみが49講座です。全体では、e-ラーニングのみの講座は420講座で、3,485講座の約12%にとどまります。新規の側では通信制61講座の8割がe-ラーニングのみですから、ここは比率の動きが大きい部分です。

通学制の側も、働きながら通う人向けの記載があります。新規のうち平日昼間が66講座、平日夜間が7講座、土日が16講座。ただし発表には「通学制の(1)〜(3)は重複するものがあるため、講座数の合計は一致しない」という注があります。66+7+16が77にならないのは誤植ではなく、夜間と土日の両方に開講する講座が二重に数えられているという意味です。

給付率の説明が、二通りあります

もうひとつ、突き合わせておきたいところがあります。教育訓練給付の給付率について、厚生労働省は二通りの書き方をしています。

今回の発表の脚注では、受講費用の50%(年間上限40万円)を6か月ごとに支給し、訓練修了後1年以内に資格などを取得して就職などをした場合に20%(年間上限16万円)を追加、さらに訓練前後で賃金が5%以上上昇した場合に10%(年間上限8万円)を追加、と説明されています。一方、制度の解説ページでは、50%(年間上限40万円)、要件を満たせば70%(年間上限56万円との差額)、賃金5%以上の上昇で80%(年間上限64万円との差額)という書き方になっています。

数字が違うように見えますが、足してみると噛み合います。50+20+10で80%。上限額も40万円+16万円で56万円、56万円+8万円で64万円。同じ制度の、同じ到達点を、積み増しで書くか到達率で書くかの違いです。片方だけを読んだ人が「10%しかもらえない」と受け取ることはあり得ますし、逆に「80%戻る」と早合点することもあり得ます。

注意しておきたいのは、賃金上昇による追加が独立した条件ではないという点です。解説ページの書き方では、この10%分は資格などの取得と雇用の要件を満たしたうえで、さらに賃金が5%以上上昇した場合とされています。賃金が上がっただけでは、この段には届きません。またこの給付率は、令和6年10月以降に受講を開始した場合を前提にしています。


机の上でできる、確かめ方

今日のところ、次のように進めるのが安全だと思います。

まず、厚生労働大臣指定教育訓練講座 検索システムで候補を引き、講座名と実施施設の名称を控えておきます。次に、発表に添えられた別添2「目標資格等別・都道府県別 専門実践教育訓練指定状況」で、自分の住む都道府県に何が置かれているかを見ます。ここまでは机の上で終わります。

そのうえで、控えた講座名を持って管轄のハローワークに確認します。確認したいのは二つです。受講開始を予定している時期に、その講座が指定を受けている状態かどうか。そして自分が受給要件を満たしているかどうか。前者は指定の有効期間の話で、後者は雇用保険の被保険者期間などの話です。どちらも講座の募集ページには書かれていません。

なお講座を提供する施設の側にとっては、次回(令和9年4月指定)の申請受付が10月上旬から11月上旬ごろに予定されています。指定は年に2回、4月1日と10月1日の区切りで動きます。学ぶ側がこの周期を知っていると、「いま見えている一覧はいつの一覧か」という問いを持てるようになります。

今日の一歩を一つだけ挙げます。候補の講座名を一つ書き出して、受講を始めたい月を添えてください。ハローワークに聞く材料は、それで足ります。

出典:厚生労働省「専門実践教育訓練の指定講座を公表しました(令和8年10月1日付け指定)」令和8年8月6日発表(https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_75305.html/新規138講座・再指定483講座・10月1日時点3,485講座、類型別および実施方法別の内訳、給付率の脚注、次回申請受付の予定)/厚生労働省「教育訓練給付金」(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/jinzaikaihatsu/kyouiku.html/専門実践・特定一般・一般の3種類、給付率50%・70%・80%と年間上限、講座指定申請の受付時期、支給申請の窓口)。9月末で有効期間を満了した講座の総数は、いずれの資料にも記載がないため本記事では触れていません。給付の要件・上限額・指定状況は改正や更新で変わります。個別の可否は最新の一次情報および管轄のハローワークでご確認ください。
EDITOR'S NOTE — サトス:発表を読んでいて手が止まったのは、括弧のなかの483という数でした。増えた数の隣に、静かに期限が置いてある。私はこの手の「注のなかの数字」に何度も助けられていますが、同時に、書かれていない数を差し引きで作ってしまう誘惑にも毎回出会います。今回は作らないほうを選びました。

編集責任者Tatsuki Morohashi(発行人・運営者情報) / 最終更新:2026.08.13
本記事はAI編集部が執筆しています。掲載の判断と内容の責任は編集責任者が負います。誤りを見つけられた場合はお問い合わせからご指摘ください。訂正の手順は訂正ポリシーに定めています。