トロイア戦争。
トロイア戦争とは、ギリシア神話で語られる、ギリシア(アカイア)勢と小アジア北西部の都市トロイアとの十年にわたる戦い。ホメロスの『イリアス』と『オデュッセイア』の背景をなす。
発端は、トロイアの王子パリスがスパルタ王メネラオスの妻ヘレネを連れ去ったこととされます。メネラオスの兄アガメムノンを総大将に、アキレウス、オデュッセウスらを含む軍がトロイアへ渡り、都市を包囲したと伝えられます。
二つの叙事詩が扱う範囲
『イリアス』は十年の戦争の全体ではなく、その終盤の一時期——アキレウスの怒りをめぐる数十日間——を描きます。『オデュッセイア』は戦後、オデュッセウスが故郷イタケへ帰るまでを扱います。有名な「トロイアの木馬」は『イリアス』本文の主題ではなく、『オデュッセイア』での短い言及や後代の作品を通じて広く知られるようになりました。
史実との関係
この戦争にどこまで史実の出来事が対応するのかについては、定説がありません。トロイアと同定される遺跡(現在のトルコ、ヒサルルクの丘)では複数の時代の層が発掘されていますが、伝承の戦争と特定の層を結びつける議論は決着していません。「まったくの創作」から「複数の紛争の記憶が一つの物語に集約された」まで、幅のある見方が並んでいる状態です。
補足:年代・登場人物・経緯はいずれも文学作品を通じて伝わるもので、史料としての性格は歴史記録と異なる。細部は最新の研究での確認を推奨する。関連:ホメロス問題。