用語辞典 — ツギノテ。LEARNGLOSSARY

ホメロス問題

ホメロス問題とは、『イリアス』と『オデュッセイア』の作者および成立過程をめぐる、長年にわたる議論の総称。

含まれる問いは複数あります。ホメロスという一人の詩人が実際にいて両作を書いたのか。二作の作者は同じ人物なのか。文字で書かれたのか、それとも口頭で歌い継がれてきたものが後にまとめられたのか。いずれも古代から論じられてきました。

口承の技法という見方

20世紀の研究で注目されたのは、両作に繰り返し現れる決まり文句です。「足の速いアキレウス」「知略に富むオデュッセウス」といった定型の形容句や、場面ごとの型どおりの言い回しが、無数に使い回されています。これは書き手の癖ではなく、文字に頼らずに長い物語を韻律にのせて歌うための技法だと分析され、口承の伝統を前提とする見方が有力になりました。

それでも決着はしていない

口承の伝統があったとしても、いま読める形がいつ・どのように固まったのかは別の問題です。ある時点で一人の優れた詩人が全体をまとめ上げたと考える立場も、長い年月の集積とみる立場も残っています。「ホメロス」を個人の名として扱うか、伝統の名として扱うかは、いまも書き手によって揺れます。

補足:本項は議論の枠組みを紹介するもので、いずれの説にも決着はついていない。細部は最新の古典学研究での確認を推奨する。関連:トロイア戦争