学校・教室 — 2026.08.12 NO.051 / TSUGINOTE LEARN

体育館のエアコンは31.7%。
足りないのは、暑さへの危機感ではありません

地域の図書館のような場所で、年齢の異なる大人たちが本や資料を手に学んでいる様子を描いたイラスト

要点:令和8年7月30日、文部科学省が公立学校施設の空調(冷房)設備の設置状況を二本立てで公表しました。いずれも令和8年5月1日現在の数字です。公立小中学校の普通教室は99.6%、体育館等は31.7%。ただし伸び幅を見ると、速いのは体育館のほうでした。差が縮まりにくい理由は、体育館の空調を支える補助制度の要件のほうに書かれています。

この夏も、体育館での活動を控えたという話を耳にします。学校の暑さ対策はもう十分に議論されてきたはずなのに、なぜ体育館だけが取り残されているように見えるのか。7月30日に公表された二つの調査結果は、その問いに数字で答えを出しています。ただし、二つを並べて読むには少しだけ手順が要ります。

同じ日に、二つの調査が出ました

文部科学省が令和8年7月30日に公表したのは、「公立学校施設における空調(冷房)設備の設置状況調査」と「公立学校施設の体育館等の空調(冷房)設備の設置状況調査」の二つです。前者が普通教室・特別教室等・給食調理場を、後者が体育館(中学校・高等学校では体育館・武道場)を扱います。調査時点はどちらも令和8年5月1日現在で、対象は全国の公立学校施設です。

結果はこうでした。公立小中学校の普通教室の設置率は99.6%、特別教室等は72.6%。一方、公立小中学校の体育館等は31.7%。避難所に指定されている学校に絞っても33.1%です。三分の一を少し超えたところ、という水準になります。

この数字だけを見れば、教室は片づいたが体育館は手つかず、という印象になります。ただ、それぞれの調査が示している「前回」を見ると、話は少し変わります。

「前回」がいつなのかで、伸びの見え方が変わります

普通教室や特別教室の調査が比較している前回は令和6年9月時点です。これに対して体育館等の調査の前回は令和7年5月時点。前者は約1年8か月ぶり、後者は1年ぶりの数字ということになります。並べると次のようになります。

区分(公立小中学校)今回
令和8年5月1日
前回前回の時点
普通教室99.6%99.1%(+0.5)令和6年9月
特別教室等72.6%66.9%(+5.7)令和6年9月
体育館等31.7%22.7%(+9.0)令和7年5月
体育館等(避難所指定校)33.1%23.7%(+9.4)令和7年5月

1年で9.0ポイント。これは、この四つの中でもっとも大きな伸びです。しかも期間は他より短い。つまり「体育館の整備が止まっている」という読み方は、少なくとも直近1年の動きとは合いません。普通教室が0.5ポイントしか動いていないのは、すでに天井に達しているからです。伸びしろが残っている場所ほど、数字は大きく動きます。

設置率の低さと、進み方の遅さは別のことです。31.7%という数字は、遅れの証拠ではなく、出発点が低かったことの記録として読むほうが実態に近いように思われます。


補助のかたちから、工事の重さが見えます

では、なぜ出発点がここまで低かったのか。公表資料に添えられた参考資料が、その手がかりになります。体育館の空調を支えているのは「屋内運動場の空調設備整備事業」という枠組みで、学校施設環境改善交付金の中に置かれています。国が費用の2分の1を算定し、対象工事費は下限が400万円、上限は電気式(EHP)で1.1億円、ガス式(GHP)で1.4億円とされています。

注目したいのは補助要件です。二つあります。ひとつは、その学校が避難所に指定されていること。もうひとつは、断熱性が確保されることです。断熱性が確保されていない施設については、断熱工事を空調設置と併せて実施するか、別の年度(令和15年度まで)に実施することが求められます。

関連工事の例として挙げられているものも具体的です。配管の新設・撤去・再配置・更新、キュービクル(受変電設備)の設置・更新など電源確保のための工事、床下・壁・屋根の断熱化や遮熱化に伴う内外装の撤去・再設置、建具の改修。加えて、資産が形成されないリース契約による空調設置は対象外と明記されています。

ここから読めるのは、体育館の空調が「エアコンを買って取り付ける」という工事ではないということです。広い空間を冷やすための電源を確保し、熱が逃げないように建物そのものに手を入れる。普通教室にエアコンを入れるのとは、工事の粒が違います。上限額が1億円を超えて設定されているのも、そうした規模を前提にしているからでしょう。もっとも、個々の自治体が何に手間取っているかまでは、この調査からは分かりません。断定は避けておきます。

期日が二つあります

今後の見通しについて、文部科学省は令和7年6月に閣議決定された「第1次国土強靱化実施中期計画」を挙げています。避難所等にもなる公立小中学校の体育館等の空調設置率について、令和17年度までに100%にする目標が掲げられている、という説明です。

ところが、先ほどの補助制度には別の期日が書かれています。補助時限は令和15年度まで。目標の年度と、支援の期限が2年ずれています。この先どう扱われるのかは公表資料からは読み取れません。延長されるのか、別の枠組みに引き継がれるのか、現時点で確かめられるのは「二つの年度が並んでいる」という事実までです。

残りの道のりも見ておきます。31.7%から100%までは68.3ポイント。直近1年の9.0ポイントという速度がそのまま続けば、単純計算では8年ほどで届きます。令和17年度末までは9年半あるので、計算上は間に合う速度です。ただしこの見積もりには、整備しやすい施設から順に手が付いていくという当たり前の事情が入っていません。後半ほど条件の厳しい建物が残る可能性はありますが、それを裏づける数字を私は見つけていません。ここも「そうかもしれない」までにとどめます。


体育館の陰に隠れている数字

体育館の31.7%が目を引くぶん、同じ日に出たもう一方の数字は流れてしまいがちです。いくつか書き留めておきます。

公立小中学校の特別教室等は72.6%。四分の一以上がまだ未設置です。高等学校の特別教室等になると61.6%まで下がります。幼稚園は保育室が100.0%に達している一方、保育室以外の諸室は92.5%。特別支援学校は普通教室98.6%、特別教室等91.7%です。

給食調理場の調理室等(非汚染作業区域=調理室・配膳室・洗浄室)は、単独調理場で91.0%、共同調理場で93.5%。単独調理場は前回の83.6%から7.4ポイント上がっており、体育館に次ぐ動きを見せています。火を使う場所の暑さがどれほどのものかを思えば、この数字が一割近く残っていることは、それ自体が一つの論点だと思います。

自分の地域の数字を見るために

ここまでは全国の合計値です。文部科学省は同じ日に、設置者別(都道府県・市町村別)の内訳もPDFで公開しています。小中学校・小学校・中学校・特別支援学校・幼稚園・高等学校に分かれており、体育館等についても同じ区分で出ています。お住まいの自治体の数字は、そこで確かめられます。

見るときに気をつけたい点を三つだけ。第一に、普通教室の表と体育館等の表は別の調査なので、取り違えないこと。第二に、体育館等の資料には避難所指定校の欄があり、全体の設置率とは別の数字が並んでいること。第三に、伸び幅を語るときは前回の時点を確認すること——1年ぶりと1年8か月ぶりでは、同じ「+5ポイント」の意味が違います。

そして最後に、これらはすべて令和8年5月1日現在の数字です。今年の夏に何が起きたか、いまその体育館がどうなっているかは、この調査には書かれていません。

出典:文部科学省「公立学校施設における空調(冷房)設備の設置状況調査を実施(令和8年5月1日現在)」令和8年7月30日公表(mext.go.jp)/同「公立学校施設の体育館等の空調(冷房)設備の設置状況調査を実施(令和8年5月1日現在)」令和8年7月30日公表(mext.go.jp)。設置率・前回値・調査時点・補助制度の算定割合/対象工事費/補助要件/補助時限、および令和17年度までに100%とする目標(第1次国土強靱化実施中期計画・令和7年6月閣議決定)は、いずれも両調査の公表資料(調査結果PDF)の記載による。設置者別の内訳は同ページに掲載されているPDFを参照。制度・目標年度は今後の改定で変わり得るため、一次資料での確認を推奨します。
EDITOR'S NOTE — サトス:見出しになりやすいのは「31.7%」という低さのほうですが、私が引っかかったのは前回時点の違いでした。同じ日に出た二つの調査が、違う過去と自分を比べている。悪意のある話ではなく、調査の周期が違うだけのことです。ただ、そこを揃えずに「教室は進んだが体育館は進まない」と言ってしまうと、実際には一番速く動いている場所を見落とすことになります。数字を読む手順は、いつもここでつまずきます。

編集責任者Tatsuki Morohashi(発行人・運営者情報) / 最終更新:2026.08.12
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