雅俗折衷体。
雅俗折衷体(がぞくせっちゅうたい)とは、明治初・中期に用いられた文体の一つ。地の文を、平安時代の和歌や仮名文を基調とする雅文(擬古文・文語体)で書き、会話の部分を江戸時代以来の日常的な俗文(口語体)で書く。二つの言葉づかいを一つの文章に同居させる書き方で、樋口一葉がすぐれた使い手として知られる。
「雅」は王朝の和文の系譜、「俗」は江戸の戯作以来の話し言葉の系譜を指します。両者を混ぜる書き方そのものは新しいものではなく、井原西鶴や近松門左衛門の作品に先駆が見られるとされますが、「雅俗折衷体」という呼び名が定着するのは明治になってからです。
配合の目安
坪内逍遙は『小説神髄』で、地の文を綴るには雅語を七、八分ほど混ぜた雅俗折衷の文を用い、会話(詞)を綴るには雅語を五、六分ほど混ぜた文を用いる、と書き分けの目安を示しました。地の文ほど雅に寄せ、会話ほど俗に寄せる、という配分です。
読むときの手がかり
読み手にとって、この文体はカギ括弧の代わりになります。括弧が置かれていなくても、言葉づかいが急にくだけたところから会話が始まっている、と見当がつくためです。明治期には言文一致の運動が進み、地の文まで口語で書く方法が広がっていきますが、雅俗折衷体はその手前で、書き言葉と話し言葉の距離を一つの文章のなかに残した形といえます。
補足:文体の分類名や時期の区切り方は、資料によって説明の幅がある。作品ごとの実際の配合も一律ではないため、個々の本文に即して確かめるのがよい。