アスプ。
アスプ(asp)とは、古代の文献に現れる毒蛇の呼び名。ギリシア語の「アスピス(aspis)」に由来する。現代の分類学のように特定の一種を厳密に指す語ではなく、古代の書き手が毒蛇として言及する際の総称に近い。
この語が広く知られているのは、クレオパトラ七世(前30年没)の死をめぐる記述に登場するためです。日本語では「毒蛇」「コブラ」と訳されることも多く、多くの場合エジプトコブラ(Naja haje)と結び付けられます。ただし、古代の記述からその種を確定することはできません。
史料での扱い
現存する最古の記述であるストラボン『地理誌』第17巻10節は、アスプに噛まれた説と毒の塗り薬を用いた説の二つを並べ、どちらが確かとも書いていません。プルタルコス『アントニウス伝』86章は、無花果の籠に隠されていた版と、水がめに閉じ込めて金の糸巻き棒でつついた版の二通りを記したうえで、「真相の程は誰も知らない」と明言しています。
方法としての難しさ
エジプトコブラは体が大きく扱いにくく、命じられて噛むわけでもなく、一度の咬みで注入される毒の量も一定しません。一匹で複数人を短時間で死に至らせるのは難しいという指摘が2010年に出ています。コブラの毒は痛み・腫れ・麻痺を伴い、死までに時間がかかることが多いとされます。現代の研究の多くは、自死そのものは史実とみたうえで、方法は何らかの毒であった可能性が高いとみています。
補足:古代の「アスプ」が指す種、クレオパトラの死の方法・日付はいずれも確定していない。細部は一次史料と最新の研究での確認を推奨する。