「AI面接は不可」と読まれた一行。文科省が線を引いたのは、別の場所です。
要点:文部科学省が7月30日に更新した大学入試のQ&Aで、「AI面接やペーパーインタビューでは代替できない」と示されました。ただ、その一行の手前には三つの留意点が並んでいて、AIという語はそのどれにも出てきません。禁じられたのはAIそのものではなく、三つの条件を満たさない面接のほうです。加えて、この文書は受験生がAIを使うことについては何も述べていません。そちらは向きの違う別の文書が扱っています。
7月末から8月にかけて、「AI面接は認められない」という短い見出しがいくつか流れました。出どころは、文部科学省が2026年7月30日に更新した「令和9年度大学入学者選抜実施要項等に関するQ&A」です。実際に該当箇所を開いてみると、たしかにそう書いてあります。
ただ、そこに至るまでの文面が思いのほか長い。AIを名指しして退けているのは最後の一文だけで、その前には面接そのものに求める条件が三つ並んでいます。順に読むと、線が引かれた場所が見出しより少し手前にあることが分かります。
まず、7月30日に足されたのは7件です
Q&Aは、実施要項そのものではありません。令和9年度(2027年度)大学入学者選抜実施要項は、2026年5月27日付けの高等教育局長通知として先に出ています。7月30日に更新されたのは、その要項について大学から寄せられる疑問に文科省が答える補助文書のほうです。
PDFの冒頭には「青色は令和9年度要項からの新規のもの」と断りがあります。新しく載ったのは7件。入試方法に関するものが4件(Q3-3、Q3-5、Q3-6、Q3-7)、調査書の書き方に関するものが3件(Q調-11から13)です。海外の高校や高等専門学校から編入した生徒、他校から転入した生徒の調査書をどう作るか、というのが後者です。
この4件と3件は、まったく別の話に見えて、どちらも「書類だけでは分からないことをどう扱うか」に触れています。前者は面接、後者は空欄になる修得単位数と評定の欄です。
面接が必須になったのは、5月のほうです
順序を取り違えないために、要項本体の変更を先に置きます。総合型選抜と学校推薦型選抜について、令和9年度要項は「面接(ディベート、集団討論、プレゼンテーション、口頭試問等を含む。オンラインによる実施を含む。)による評価を必ず行う」と定めました。これが2026年5月27日の通知です。
導入には猶予があります。大学ジャーナルオンラインの報道によれば、遅くとも2029年度(令和11年度)入試までに面接を導入するとされ、2年間の準備期間が置かれました。非公募型の学校推薦型選抜、いわゆる指定校推薦のうち、高校との緊密な連携で丁寧なマッチングが図られ、合格したら入学すると志願者が確約して受験するものについては、面接の要否を大学の実情に応じて判断できる、という例外もあります。
7月30日のQ&Aは、この必須化を受けて「では、どんな面接ならよいのか」に答えたものです。禁止令が新たに出たわけではありません。
三つの留意点に、AIという語は出てきません
Q3-6の答えは、まず各大学がアドミッション・ポリシーに基づいて方法を検討する必要がある、と述べます。そのうえで「今回面接による評価が必須とされた趣旨やその適正な実施の観点からは、例えば以下の点に留意いただくことが必要です」として、三点を挙げています。
| Q3-6が挙げた留意点(要約) | 言い換えると |
|---|---|
| 志望する学問分野への意欲や適性等を多面的・総合的に評価するために、評価者が直接評価を行うものであること | 評価する主体が人であること |
| 充実した内容の質問等に対して、個々の受験者が即時にインタラクティブに応答するものであること | その場で往復があること |
| 公平・公正な実施の観点から、適切な評価基準の設定、障害等の特性への配慮、複数名の評価者による評価等の体制を整備すること | ひとりの目で決めないこと |
そして最後に、この三点を受ける形でこう書かれています。「このため、AI面接やペーパーインタビューによって今回必ず行うこととされた面接を代替することはできません。」
「このため」でつながっている以上、AI面接が挙がったのは結論ではなく例示だと私は読みます。あらかじめ用意した設問に一方向で答えるだけの形式は、二つめの条件を満たしません。紙で問いに答えるペーパーインタビューが同じ文に並んでいるのは、そのためでしょう。AIかどうかより、往復があるかどうかが軸になっています。
禁じられたのは道具ではなく、条件を満たさない形式です。道具の名前で覚えると、条件のほうを取り落とします。
受験生がAIを使う話は、ここには書かれていません
もう一つ、混ざりやすい論点があります。今回のQ&Aが扱っているのは、大学が評価する側でAIを使うことです。受験生が出願書類の作成にAIを使うことについては、この文書は何も述べていません。
そちらは、2024年に示された「大学入学者選抜における生成AIの取扱いについて」という別の資料が扱っています。書きぶりも異なります。国が一律に禁じるのではなく、各大学が教学面の指針と整合する適切なルールを策定・運用することが期待される、という組み立てです。実際、資料に載っている大学の対応例は三者三様で、「生成AIの利用の有無が評価結果に影響を与えないようにします」と書く大学もあれば、「特段の指示がない限り、入学者選抜において受験生が生成AIを使用することは認めません」と方針を公表する大学もあります。
同じ入試のAIでも、大学の側は要項で線が引かれ、受験生の側は各大学の募集要項に委ねられている。向きが逆なので、片方の見出しだけでもう片方まで分かった気になると、募集要項の確認を飛ばすことになります。
残りの3件も、静かに効いてきます
入試方法の新規4件のうち、Q3-6以外の三つも押さえておく値打ちがあります。
Q3-5は、教科・科目に係る個別テストを2月1日以降に実施する場合や、そもそも実施しない場合でも面接が必要か、という問いです。答えは、実施の有無および時期に関わらず、総合型選抜・学校推薦型選抜に位置付けるものには面接による評価を行ってください、というものでした。区分の名前で決まる、という整理です。
Q3-3は、個別テストを行う場合の配点について、他の評価方法との間でバランスの取れた配分とし、その成績が実質的に評価・判定の大部分を占めることがないよう留意を求めています。Q3-7は、外国人留学生試験についても扱いを分けているものではない、と明記しました。
三つ並べると、年内入試を学力試験に寄せていく流れに対して、区分の趣旨のほうへ引き戻す意図が読めます。面接の必須化も、その一環として置かれたものと見るのが素直でしょう。
いま確かめられること
2027年度入試を受ける高校3年生にとって、この改定は志望校の募集要項の形に現れます。面接が新設された区分があるか、オンラインか対面か、集団討論やプレゼンテーションを含む形か。要項本体はオンライン面接を認めていますが、その場合は本人確認と不正防止の措置を講じることとされているので、当日の環境について指定が付くこともあり得ます。
高校の進路指導の側では、面接の要否が変わった区分を洗い出す作業が先に来ます。大学の側では、複数名の評価者という体制の条件が、実務としては最も重い部分かもしれません。
この記事から持ち帰る一歩を一つだけ挙げるなら、志望する区分の募集要項で「面接」と「生成AI」の二語を検索してみることです。前者は今回の改定で書き足された可能性があり、後者は大学ごとに書きぶりが違います。同じ入試のAIの話でも、答えが載っている場所が別なのだと分かれば、それだけで確認の手間は減ります。
編集責任者:Tatsuki Morohashi(発行人・運営者情報) / 最終更新:2026.08.11
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