半減期。
半減期(half-life)とは、放射性の物質に含まれる原子核の数が、崩壊によって半分に減るまでにかかる時間。個々の原子核がいつ崩壊するかは決まっておらず、集団としての減り方だけが一定の割合になる、という性質にもとづいた量です。
この定義で押さえておきたいのは、半減期の長さが物質の量や濃度に左右されないことです。1グラムでも1トンでも、半分になるまでの時間は同じ。温度を上げても、湿度を変えても、容器の材質を変えても変わりません。化学反応の速さは条件で動きますが、こちらは動きません。扱いとしては非常に単純で、そのぶん手の打ちようがない量です。
直線では減らない
半減期を1回過ぎれば残りは2分の1、2回で4分の1、3回で8分の1になります。10回で約1,000分の1。減り方が直線ではないので、「半減期の2倍の時間が経てばゼロになる」という読み方は誤りです。数字の上では、いつまでも完全にはゼロになりません。
もう一つ、混同されやすい点があります。半減期は「その時間が過ぎたら安全になる時間」ではありません。半分に減っても、もとの量が多ければ残る量も多い。安全かどうかを決めるのは残った量と扱い方であって、経過した半減期の回数ではありません。
核種によって、桁が違う
| 核種 | 半減期 |
|---|---|
| ヨウ素131 | 約8日 |
| セシウム137 | 約30年 |
| ラジウム226 | 1,601年 |
| 炭素14 | 約5,700年 |
この開きが、測定の場面で核種を分けて扱う理由になります。数日で消えるものと、千年単位で残るものを、同じ「放射能」という一語でまとめると判断を誤ります。
歴史を調べる道具としての半減期
減り方が一定であるという性質は、時計としても使えます。炭素14の半減期を利用した放射性炭素年代測定は、木材・骨・繊維といった有機物の年代を推定する手段として、考古学と歴史学に広く使われています。遺跡の年代について「およそ何年前」という数字が出てくるとき、その裏側にあるのはこの概念です。
補足:核種ごとの半減期は理科教育および放射線防護の分野で広く記載されている値による。ラジウム226の1,601年はクリスチャン・サイエンス・モニターの記載による。関連:マリ・キュリーが書いた紙は、いまも鉛の箱に納められている。