紙の「受験案内」は、
もう届きません。
要点:2027年度(令和9年度)大学入学共通テストの出願サイトが2026年7月1日に開設されました。ただし「出願」が始まったわけではありません。マイページの作成は7月1日から、出願内容の登録は9月15日から。窓が二つに分かれています。さらに大学入試センターは冊子の「受験案内」を印刷・配付しません。手続きから紙が消えたぶん、受験生の側に新しく増えた仕事があります。
「共通テストの出願は9月」と覚えている方は、半分だけ正しいことになります。半分というのは、出願にたどり着く前の工程が、今年はもう始まっているからです。
大学入試センターは2026年7月1日、2027年(令和9年)大学入学共通テストの出願サイトを開設しました。同日午前10時から、志願者はマイページを作成できるようになっています。共通テストの出願手続きは2026年度試験から電子化され、全志願者が個人でパソコンやスマートフォン等を使ってWeb出願を行う形になりました。今回はその2年目に当たります。
窓は二つある
まず日程を並べます。マイページの作成と、出願内容の登録は別の期間です。ここが混ざると、9月に慌てることになります。
| 手続き | 期間 |
|---|---|
| マイページの作成 | 2026年7月1日(水)10:00 〜 10月2日(金)17:00 |
| 出願内容の登録 | 2026年9月15日(火)10:00 〜 10月2日(金)17:00 |
| 検定料等の支払い | 2026年9月15日(火)10:00 〜 10月2日(金)23:59 |
| 出願内容の確認・訂正 | 2026年10月9日(金)10:00 〜 10月16日(金)17:00 |
| 受験票の取得 | 2026年12月4日(金)10:00 〜 |
| 本試験 | 2027年1月16日(土)・17日(日) |
| 追試験・再試験 | 2027年1月23日(土)・24日(日) |
| 成績の閲覧(希望者のみ) | 2027年4月1日(木)10:00 〜 4月30日(金)17:00 |
数えてみると、出願内容の登録に使える期間は9月15日から10月2日までの2週間半ほどです。この短い窓の中で、志願者情報の入力、顔写真データのアップロード、受験教科等の登録、そして検定料の支払いまでを終わらせる必要があります。検定料の支払いを行わないと出願は完了しません。
一方、マイページの作成は7月1日から10月2日まで、三か月分の窓が開いています。作成に必要なのは氏名・生年月日・メールアドレス・電話番号・パスワード・秘密の質問といった情報で、出願内容そのものは含まれません。つまり、アカウントをつくる工程だけが前倒しで開放されている、という構造です。
なぜ分けたのか、その理由をセンターが明言している資料は、私が確認した範囲では見つかりませんでした。ただ、公開情報から読み取れることはあります。センターは7月1日に「共通テスト出願サイトからのメールが届かない場合の対応」というPDFを同時に公開し、マイページ作成編の操作マニュアルと説明動画も出しています。アカウント登録とメール受信という、詰まりやすい入口の工程を、混み合う9月より前に済ませてもらう設計だと解釈するのが自然でしょう。断定はできませんが、そう読むと期間の分け方に筋が通ります。
冊子は、もう刷られない
もう一つ、性格の違う変化があります。受験案内の扱いです。
大学入試センターは、冊子(紙媒体)の印刷・配付を行いません。共通テストを利用する大学の入試担当窓口でも配付されません。出願に当たって紙媒体を入手する必要はない、と明記されています。冊子が欲しい場合はテレメール進学サイトの「印刷・発送サービス」がありますが、冊子を入手しても郵送による出願はできません。
では受験案内はどこにあるのか。PDFです。一括ダウンロード版は12.2MB、章立てはA試験概要/B出願/C出願後/D試験/E志望大学への出願等に係る手続/F試験実施後/Gその他/H高等学校等一覧と続き、高等学校等一覧は66ページから始まります。センターは「必ず精読し、出願手続や試験の制度について十分に理解した上で出願してください」と呼びかけています。
郵送の手間は消えました。しかし、読む仕事と期限を管理する仕事は消えていません。移動しただけです。
紙の冊子には、机の上に置かれているだけで目に入るという特性がありました。PDFにはそれがありません。開かなければ存在しないのと同じです。この差は小さく見えて、締切のある手続きでは決定的に働くことがあります。
いま打てる手は、地味な3つ
9月15日を待つ必要のない準備が、センターの案内から読み取れます。いずれも派手さはありませんが、9月の詰まりを減らす種類のものです。
1つ目は、メールの受信設定です。出願にはメールアドレスが必要で、フリーメールや携帯のアドレスでも構いませんが、「[email protected]」「[email protected]」「[email protected]」からのメールが迷惑メールに振り分けられないよう、あらかじめ設定しておくよう案内されています。センターがサイト開設と同じ日に「メールが届かない場合の対応」を公開している点は、示唆的だと思います。
2つ目は、顔写真データの準備です。出願内容の登録時にアップロードが必要で、受験案内の37ページに要件が書かれています。撮り直しが発生しうる工程を、締切の直前に置きたくはありません。
3つ目は、支払い方法の下見です。クレジットカード、コンビニエンスストア、Pay-easy(利用可能な金融機関のATMおよびインターネットバンキング)が使えます。どれを選ぶかは受験案内の29ページと38ページを参照するよう案内されています。保護者のカードを使うのか、コンビニで払うのかは、家庭の中で先に決めておける話です。
なお、操作マニュアルは第2編(出願・受験票・成績の閲覧編)が9月上旬頃、第3編(志望大学への出願に係る手続編)が11月上旬頃に公開予定とされています。手続きの説明そのものが、まだ全部そろっていない段階だということです。
受験だけの話ではありません
ここまで大学入試の話をしてきましたが、同じ構造は大人の学びの側にもあります。教育訓練給付の申請、公的な講座への申し込み、資格試験の受験申請。この数年で、そのほとんどが窓口から画面へ移りました。窓口には人がいて、書類の不備をその場で指摘してくれました。画面はそれをしません。エラーは出しますが、なぜ弾かれたのかを噛み砕いてはくれません。
デジタル化は手続きを楽にしたと言われます。実際、郵送や窓口へ行く時間は要らなくなりました。ただ、そこで浮いた時間の一部は、案内を自分で読み、期限を自分で管理し、通知が届いているかを自分で確かめる仕事に置き換わっています。この置き換えは、気づかないうちに進みます。
だから、今日の一歩は一つだけにします。手帳でもカレンダーアプリでもよいので、9月15日ではなく、9月上旬に「出願準備」の予定を入れておくことです。マイページを作るのも、写真を用意するのも、それより前に済ませられます。窓が二つあると分かっている人だけが、先の窓に手を伸ばせます。