自由研究は「アリ」、
読書感想文は「ナシ」。
要点:SHIFT AIが2026年7月24日、小学1〜6年生の子供と同居する保護者722名への調査結果を発表しました(調査期間は7月8日〜11日)。夏休みの宿題に生成AIを使うことは42.1%が「アリ」。ただし課題別に見ると、自由研究のテーマ決めは67.0%が許容するのに、読書感想文は32.7%、作文・日記は31.3%と、倍以上の開きがあります。この線がどこに走っているのか。そして、線の位置を実は大きく動かしている「宿題とは別の要因」が何か。順に見ていきます。
同じ夏休みの宿題です。自由研究にAIを使うのは7割の保護者が許し、読書感想文に使うのは3割しか許さない。この差は、どこから来るのでしょうか。
「AIを使うのはズルだから」という説明では、この開きは説明できません。ズルかどうかで割り切るなら、自由研究も読書感想文も等しくダメになるはずだからです。実際、同じ調査で「子供が宿題で生成AIを使うこと」への評価を聞くと、「賢い使い方であり、むしろ推奨したい」「使い方を学ぶ機会になる」の合計が54.7%、「答えを写すだけならズル」「基本的にズル」の合計が44.8%。全体としてはほぼ真っ二つです。それなのに課題別では、きれいに濃淡が出る。保護者は「AIか否か」ではなく、もっと細かい何かで判断していることになります。
数字を並べ直してみます
まず調査の全体像です。子供が生成AIを利用していると保護者が把握している割合は23.0%、「利用しているが詳しい内容までは把握していない」が14.7%で、合わせて37.7%。「使っていると思うが確証はない」まで含めると45.2%に達します。利用を把握している166名に用途を聞くと、最多は「学校の宿題」の56.0%でした。つまり、使うかどうかの議論とは別に、すでに使われている、というのが出発点です。
そのうえで、課題別の許容度を並べます。
| 宿題での生成AI利用 | 許容する保護者 |
|---|---|
| 自由研究のテーマ決め・アイデア出し | 67.0% |
| わからない問題の解説 | 64.1% |
| 読書感想文 | 32.7% |
| 作文・日記 | 31.3% |
上の二つと下の二つの間に、はっきりした段差があります。テーマ決めと解説は、どちらも「考え始めるための入口」や「つまずきをほどく補助」です。一方、読書感想文と作文・日記は、自分の頭で考えて文章にすること自体が課題の中身です。線は「AIを使うか」ではなく、課題のどの部分をAIに渡すかに走っている、と読めます。調査元のSHIFT AIも、保護者はAIを「答えの代行」ではなく「学びの伴走」として使わせたいと考えている、と分析しています。
教育学には、この線の名前があります
実はこの線引きには、教育学の古い概念がよく重なります。スキャフォールディング(足場かけ)です。1976年にウッド、ブルーナー、ロスの3人が提唱したとされる考え方で、学習者が一人ではまだ届かない課題に取り組むとき、教える側が一時的な「足場」を組んで支え、できるようになったら外していく。建築の足場と同じで、足場は建物の一部にはなりません。
足場は残らない。建物は本人が建てる。保護者が許しているのは足場としてのAIで、拒んでいるのは建物を代わりに建てるAIです。
テーマ決めのアイデア出しや、わからない問題の解説は、足場の側にあります。読書感想文の代筆は、建物の側です。67.0%と32.7%という開きは、保護者がこの区別を、用語こそ使わないものの、直感的にやってのけていることを示しているように見えます。
もっとも、足場のつもりが建物になってしまう事故は簡単に起きます。「テーマのアイデアを出して」と頼んだつもりが、構成も結論も出てきてしまい、子供はそれを写すだけになる。AIの答えにはハルシネーション(もっともらしい誤り)も混ざります。足場と建物の境目は、ツールの側では引いてくれません。
線を動かしているのは、課題だけではありませんでした
ここまでは課題の性質の話です。ところがこの調査には、もう一つ目を引く数字があります。
保護者自身が生成AIを月に数回以上使っている426名では、宿題での利用を「アリ」とする回答が58.5%。ほとんど使わない・使ったことがない296名では、18.6%。実に3倍以上の開きです。宿題でのAI利用を「学びの機会」と捉える割合も、使う保護者は64.6%、使わない保護者は40.5%でした。
つまり、線の位置は課題の性質だけで決まっているのではなく、線を引く保護者自身の経験で大きく動いています。AIを日常的に使う人は、どこまでが足場でどこからが代行かの感覚を、自分の使用経験から持っている。使ったことがない人は、その感覚を持ちようがないので、まとめて遠ざける判断に傾く。どちらが正しいという話ではなく、判断の材料の量が違う、ということだと思います。
なお、子供側の利用はこの調査だけの話ではありません。明光義塾が2026年7月7日に発表した保護者1,000人調査でも、勉強や宿題で生成AIを使う子供は48.6%と報じられています。学校側も、文部科学省の生成AI利活用ガイドラインがVer.2.0で「中学校以上から」という一律の区分を外し、判断を現場に委ねる方向に動きました。国も学校も、一律の線をやめて個別の判断に向かっている。家庭に線引きが降りてくるのは、その流れの終点です。
禁止か許可かを決める前に
この調査で私がいちばん考え込んだのは、実は許容度の数字ではなく、利用予定の内訳でした。夏休みに子供が生成AIを使う予定は「親子で一緒に使う」が19.5%、「子供本人に使わせる」が21.5%、「使わせる予定はない」が40.9%。賛否はほぼ拮抗しているのに、「一緒に使う」は2割にとどまっています。
足場かけは、本来そばに人がいてこそ機能します。どこまで支えて、どこで手を離すか。その調整は、隣で見ていないとできないからです。禁止するにも許可するにも、判断の材料は「自分で使ってみた経験」からしか出てこない、というのが今回の数字が示していることでした。だとすれば、夏休みの宿題が終わる前に一度だけ、子供の課題を親子でAIと一緒にやってみる。線をどこに引くかは、そのあとで決めても遅くないのではないでしょうか。
編集責任者:Tatsuki Morohashi(発行人・運営者情報) / 最終更新:2026.07.29
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